"M1で論文を書く研究室の運営"
白木賢太郎「M1で論文を書く研究室の運営」生物工学会誌,97巻11号より
筑波大学の白木教授(全く知り合いではない)が書かれた特集記事がTwitterに流れてきたので読んだ.PIとしての研究室運営に関すること.
要約すると
- ゼミ運営
- 週2回
- 雑誌会
- 最新の論文を学生が紹介.
- 科学の型(背景,課題,目的,方法,結果,考察,波及効果)に分け,図を2つ選択,A41枚にまとめる=要約編集
- 週例会
- いわゆるゼミ.隔週で発表
- データを示すだけでなく,書き言葉で発表(なるほどと思った)
- 再現性のとれる確実なデータのみを発表
- 失敗したデータについては発表しない.
- 実験中に解決しておくべきこと(なるほど)
- 図表も英語で完成版を作る
- これらの積み重ねがそのまま論文化に直結
- 雑誌会
- 週2回
- 朝輪
- 朝9時から30分間論文を読む会.
- 雑誌会とは違うのかな.
- みんなで同じ論文を一緒に読もうとする会のよう.
- 30分でやるので効率的に読むための工夫を伝授
- 要旨の和訳(2人で分担)
- パラグラフリーディング
- 数字
- 略語
- 重要な接続詞(Howeverなど)を含む文
- 結果のパートは図表だけを読み解く(∵本文は図の補足)
- このときの教員の関わり方が知りたい
- 終了後4年生は30分の感想戦(vs 教員)
- 新人指導
- 上級生が下級生へ,のポリシー
- 教えることが最大の学びであるため
- 4週間(これは何??)に及ぶB4の計画をM1が指導して立案
- 多分,B4の初期研修をM1がやると言うことだろうか
- 研究テーマ自体の設定,選択も・・・
最後に,「研究には内容と方法がある.学生には方法をいち早く伝授し,自分で研究の内容やテーマを着想して推敲できるように教育するのがいいと思っている」と書かれていた.
紙面が多くないので情報が多少限られている感はあるが,非常に参考になる内容だった.ここの研究室は教員が1名なので,教員 vs 学生でのマンツーマン指導は現実的ではないだろうし,学生が能動的に考える,という点においても,教員があまり出張りすぎない様にするということを心がけているようだ.
大変なのは最初だろうか.指導の連鎖構造が確立されるまで,特に最初は教員が出張るしかないから,初期世代は教員も学生も大変そうな気がする.自分で考えろ,といわれても教員に聞くしかないだろうし.そこさえ乗り越えてしまえばというところだろうか.あとは,今の所属研究室の現状に照らすと,例えば朝輪に参加するモチベーションを持つ学生は多分ほとんどおらず,現状では同じような運用は無理だろうなと思った.もちろん,これは研究室としての動機付けが,この運営方法に沿っていないことによるんのだろうが,学生はついてくるのだろうか.ついてこさせるのが教員の腕だろうが,自分が学生の頃から少なからずDropoutする学生を見てきているので,難しいところだなぁと思った.
あとは,例えば朝輪における教員の携わり方だろうか.これも先ほどの記述と同様だが,初期世代は教員が先輩役も兼ねるしかない.次の世代が入ったとき,初期世代に先輩をやれといって,すなわち教員と同等の指導をせよ,見たいに捉えられると,ハードルが高すぎると感じるのではないだろうか.
分野があまりにも違うので,白木先生に直接お話を伺うことはまずないだろうが,いろいろ伺ってみたいなぁと強く思った.残念ながら,まだPIになる具体的な予定はないが,覚悟と準備は進めておく所存なので,いろんな先輩PIの意見を聞いてみようと思う.
以上,雑感