I know that this is not goodbye
U2というバンドが昔から好きで,全く世代ではないのだけれども,ずいぶん好んで聞きます.どこで知ったかというと,ニュースステーションのオープニングなんですよね.なんて壮大で,きれいで,かっこいい音楽なのだろうと.高校生ぐらいだったかな.それ以来ずっと好きで,何かにつけて聞いているし,お店のBGMなんかで流れるとテンションが上がります.
人生のステージごとに好きな音楽があって,ニュースステーションのオープニング曲に使われていたWhere the streets have no nameは高校1,2年生ぐらい.そのあと,いろんなアルバムを聴いて,All that you can't leave behindにたどり着いたのが高校3年生ぐらい.颯爽としたBeautiful dayに始まって,何か励まされるようなWalk onとか,多分地味だけど安心するWild honeyとか.その中で,一番ぐっと来たのがKiteという曲なんですね.
この曲自体は,ちょっと重めの別れが語られている曲なのだけど,歌い方も曲調も,何か心に来るものがあって,受験期の廃れた精神をこの曲を聴きながら慰めていました.この曲のサビの一節がタイトルの "I know that this is not goodbye"というわけです.先に書いた通り,歌詞全体の文脈はちょっと重いし悲しいのだけど,迫りくる不可避な別れの中で「これはさよならじゃないんだよ」とつぶやいて終わるサビが,文脈を超えてぐっと来てしまっていて,何かしらの別れがある度に口ずさんでいたりします.
***
第2期で配属された皆さんの卒業式が終わりました.6名が卒業し,4名が社会人になります.今の大学は3年生の秋に研究室配属があるので,およそ1.5年の付き合いです.短いですよね.あっという間だったように思います.配属面談をした日のこと,授業でいい学生さんだなぁと思って研究室に誘った日のこと,顔合わせの初日の緊張感など,すごく近い記憶として思い出されます.それでも多くの思い出があって,大体は笑っていて,時には思いっきり議論して,酒飲んで,ゲームして,濃密だったなぁと思います.
今年から研究室にソファとコーヒーメーカーを入れて,お昼休みには必ず学生居室でソファに座りながらコーヒーを飲むようにしていました.学生同士でわいわいしている時も,何かに緊張しているときも,少しの時間だけど何気ない日常を学生の皆さんと一緒に過ごすのがとても幸せで,ただ座っているだけの時もあれば,ちょこっと雑談するときもあれば,本当に何気ない日常でした.でも嬉しい時間でした.
多くの人にとって大学は最終学歴で,研究室というのはまさに人生の境界にあるんですね.時間は一方向なので基本的には出口なんですけど,思い出の中では入口でもある.だからこそ,研究室はいつでも戻ってこれる場所であってほしいと思います.なにも大学院に入りなおせと言っているわけではなくて,楽しかったあの頃に,ひたすらに一生懸命だったあの頃を思い出すために研究室があれば良いなと思います.それは逆行ではなく,逃避でもなく,リセットとも違って,いうなればリフレッシュでしょうか.卒業していく皆さんにとって,CMSLab.がそういう場であればこれほど嬉しいことはありません.ほんと,気軽に帰ってきてくださいね.
****
受験生のころに大好きだったKiteは,大学生になってからもずっと聞き続けてた曲でした.何か初心に戻れるような気がしていたのだけれども,段々と感動が薄れていった気がしました.そりゃ飽きるだろう,という話なんだけれども,たぶん,人生のステージがやっと一歩進んだからなんだろうと今になれば思います.大学院生になるころには,少し趣向が変わって,吉松隆のMemo floraが大好きになりました.こんな美しい音楽があるのかと.就職活動しているときや研究室で作業している時に聞いていたような気がします.なので,この曲を聴くと,西千葉の夜の情景が浮かんできます.
三菱電機に就職して再び大学院生になるころには,Pat metheny groupのLast train homeが大好きになりました.何かをやり遂げて,少し誇らしげな気持ちの時に,わくわくするような,また,安心するような感情が,この曲とともにあったことをよく覚えています.人生で何番目かに努力していた時期に,次のステージへの決心を持って眺めていた,藤沢からみる夕景の富士山が思い浮かびます.
何かこう見ると,人生のステージが変わるごとに,その情景を写す音楽が変わっていて,逆にその音楽を聴くと,そのころの情景が浮かんでくるんですよね.だからこそ,ステージが変わると,違う音楽を聴きたくなるのかもしれない.ところが今は,未だにLast train homeの次を見つけられていないのです.もちろん,新しい好きな音楽は随時発見しているのだけど,人生を彩るような音楽,というわけではない.逆に言えば,超駆け出し研究者だった社会人博士のころの気持ちが抜けてないのかもしれないですね.それはそれで,良いのか悪いのか...
*****
卒業式の日の前日,何人かが研究室を片づけに来ていました.PCをリセットして,一通り清掃して,私のチェックをもらって,その後は,仲良くゲームして,お酒を飲み交わしていました.帰るぐらいの時間になったら,いつものようにマグネットを帰宅に合わせて帰っていきました.
卒業式の当日,学科別の学位記授与が終わって散会になった後,研究室単位で写真を撮ろうと集まりました.これは何かしゃべらなければと,1週間前から考えていたことを少しだけお話しして,写真を撮って,じゃぁ終わり!となるかと思ったら,「先生,Slackを見てください」と.貼られたURLにはデジタルな寄せ書きが.しかも,本文中で引用されている図つき.絶対泣くなと思いつつ,その瞬間までこらえていたのだけれども,見た瞬間に無理になりました.本当にうれしかった.その後,何度見返したかわかりません.
******
自分の研究室を持ってから,手探りしながら3年,わりに光が見えてきたかなと思っています.もちろん,人は画一的ではないし,昨日うまくいったことが明日うまくいくとは限らない.それでも,それなりに自信がついてきた気がします.そろそろ新しい音楽がかかっても良い頃かもしれません.私も一生懸命頑張ろう.
もうすぐ桜が咲きそうです.
